Smile
手術・骨髄穿刺用プレパレーション・ツール
特徴
- 一画面内に大人用と子ども用のナビを融合させたインタフェースです.
- 俯瞰図としての視点,子どもの視点,看護師の視点,の3視点を切替ることができます.
- 説明手順と声かけが記されているので,誰でも容易に説明がすることができます.
- ナビ内容の動画を撮って組み込めるため,各施設用にカスタマイズができます.
- される側からする側の立場で操作ができるコンテンツを含んでいます.
- 動作解析システムやアイマークカメラを使った実験でその有効性を検証し学会等で発表したツールです.
入院患児に対する術前プレパレーション・ツール(デザイン学研究作品集)
内容
起動画面
対象の子どもの性別と実施場所を設定は,ボタンクリックだけで自動入力されます.
全て選択したら右下の[スタート]ボタンを押すと開始です.
終了時は,左下の[データ保存]ボタンを押してデータを保存します.操作ログはExcelデータとしてどのボタンがいつクリックされたかが分かるので,どの画面にどれくらいの時間をかけて説明したかを知ることができます.
注射器一本まで3DCG
全て3Dで作っています.これにより正確な視点切り替えが可能になっています.
男・女を選ぶ
対象の子どもの合わせて男の子か女の子を選ぶことができます.キャラクタをクリックすると手を挙げて選択されたことに応えてくれます.
融合インタフェース
左ナビは大人用でその他は子どもが操作するエリアです.
大人と子どものナビの融合インタフェースにより,同時に操作が可能になります.これにより,子どもに寄り添う心を促すことができるのです.
ポインタを画面上に置くと自動再生されます.動くことで理解を支援します.ポインタを持って行かなければ静止画のままで説明ができます.
する側に立つ
いつもされる側からする側になってみることができます.「お医者さんになろう」では,骨髄穿刺の内容をシミュレーションできます.マウスやタッチペンで聴診器をコントロールできます.右下の指アイコン(まえ・つぎ)をクリックするだけで次の説明に移ることができます.
真実を伝えるために
注射針を刺す痛みや骨髄液を採る違和感を伝えるために注射器などは,大きめに作っています.足の長さと比較して正しい大きさに描くととても小さく見えて.処置時に想像していたより大きく感じて恐怖感を増幅してしまうからです.
動画取り込み
各施設で撮影した動画を指定フォルダに入れると[→Movie]ボタンアイコンをクリックすると再生します.各施設用にカスタマイズできるため理解力を高めることができます.
★鳥瞰図としての視点
一般的な説明に用いる画面です.これで説明した気になってしまいがちですが,子どもが感じるのは,大人が思っているようなものではありません.それを気づかしてくれるための工夫が視点切り替えです.
★子どもの視点
子どもの視点に切り替えて見ると天井が動いていく様子や見上げた人の顔は不安を煽るようで怖いものがあります.
このことを看護師の人にも気づいてもらい子どもに声かけを促すことができるデザイン要素を組み込んでいます.
★鳥瞰図(手術室へ)
手術室に入る説明も鳥瞰図の視点だと大したことはないように感じてしまいます.
(ここでは男の子に)
★子どもの視点(手術室へ)
同じ手術室に入る説明でも子どもの視点だと,どれだけ怖いかが分かります.
そのことを知ることで看護師の声かけの意味を促すことができるのもこのツールの特徴です.
★看護師の視点(手術室へ)
看護師の視点にも切り替えて確認することができます.
子どもに説明する時に「看護師さんから見るとこうなんだよ」と説明することも意味があるのです.
ダウンロード提供
Windows用アプリ
(第2回 医療の質・安全学会 ベストプラクティス優秀賞 受賞)
2006年から医療関係者に無料ダウンロード提供しております.
ご希望の方は,こちらから申請して下さい.
※ Smileの開発は終了していますので、最新のOSで稼働しない場合は、古いWindowsでお試しください。
学術的検証とは
学術的検証の意味とその先にあるもの
定性的か定量的か,あるいは質的データか量的データという話しを聞いたことがあると思います.その違いの詳細は,他のサイトに委ねるとして,学術的検証という意味においては,アンケートだけで済ませるのではなく,あらゆる方法で検証することが重要です.なぜなら主体は子どもだからです.看護師や医師にツールの評価を持って検証と言ったのでは,大人の主観的判断に過ぎないからです.既存のキャラクタ,アニメを使えば,子どもは理解したと勘違いしているかもしれません.
こうした問題に対して,本ツールは開発時から,動作解析システム,アイマークカメラを使った実験を行い,それぞれの有効性を,小児看護系の学会や日本デザイン学会などで明らかにしています.デザインの面でも既存のアニメに依存するのでは無く,また動物の擬人化をするのではなく,人間としてキャラクタを設定しました.子どもの視点を取り入れたことは,子どもの視点に立つとはどう言う意味があるのかということを言葉にせずとも見ただけで説明者が気づくと考えたからです.同内容の「入院患児のための手術用プレパレーション」絵本がグッドデザイン賞を受賞しているようにデザイン性についても第三者評価を得ることは重要です.
一方で,プレパレーション・ツールが,本当に子どもに対して有効に働いたのかどうかという検証を毎日大がかりな装置を用いて実施するのは現実的ではありません.また,一つの検証済みのツールが,全ての子どもに対して同じように効果を出すと考えるのは浅はかです.
あるツールにおいて,どういう子どもにどのような効果があったのか検証をおこなうことができれば,ツールは発展します.そのためには,子ども自身がプレパレーションを評価できるツールが必要になってきます(「感性評価のためのデザイン」という考え方).
岡崎 章